10分でわかる! 日本の医師会と病院・医師の関係とは?

1.【医師会とは何か説明できますか?】

「医師会」とは、日々ニュースの記事などで誰しもが目にしたことはある単語だと思います。

しかし、「医師会」は何となく大きな組織であることは想像できても、具体的に何をしているのか、どんな組織なのか説明できる人は少ないのです。

「医師会」は、その名の通り医師の組織であるものの、その活動や組織構造はとても複雑になっています。

ここでは、普段は医師のお仕事とあまり関わりのない一般の人でも分かりやすく

・医師会ってどんな組織なの?
・医師会と病院・医師の関係

を中心にご説明いたします。

2.【そもそもどんな組織なの?】

2-1.概要

医師会の中でも最上位となる日本医師会は、「医道の高揚、医学及び医術の発達並びに公衆衛生の向上を図り、社会福祉を増進すること」を目的として、医師が個人で任意加入しています。

1916年に北里柴三郎博士らによって設立され、2013年は公益社団法人として認められた独立した法人組織となっています。

会員数は16万7千人(2015年12月時点)とのことからも、大きな組織と言えます。
また、多数の関連組織で各活動を支えています。

⇒(参照)公益社団法人 日本医師会の紹介パンフレット(PDF)

  http://dl.med.or.jp/dl-med/jma/jma_pamphlet.pdf

2-2.組織

組織としては、「日本医師会」、「都道府県医師会」、「都市区・大学医師会」の三層構造となっており、より地域に根ざした活動から、国家に関わる政策など目的のため、病院・医師・国民あらゆる立場の人のために、現在と未来を見据えたあらゆる側面から幅広い活動を行っているのです。

この三層の組織は連動しており、「都道府県医師会」になるためには、「都市区・大学医師会」になる必要があります。
さらに「日本医師会」のみなど単独の入会も基本的にはできません。

通常は、自分が勤めている病院がある都市区医師会に加入しますが、昭和大学や順天堂大学などの大学附属病院に勤める医師に向けた、大学医師会があります。

会費は、地区によってばらつきがあり、その中でも医師賠償責任保険(医賠責)と呼ばれる医療事故等発生の際にサポートする保険に入るかで会費が変わってきます。

■例:新潟県内で個人病院を経営する開業医Aさんの場合(医賠責に加入)

①都市区医師会費:年会費・入会金は地区によって異なる(数千円~)
②新潟県医師会費 個人病院:年会費260,000円
③日本医師会費 :年会費126,000円

上記のように、多くの医師は年間10万~20万円の年会費を支払っています。
勤務医の中では、病院が医師個人に代わって会費を支払っている場合もあります。

3.【具体的にはどんな活動?】

3-1.日本医師会の活動

医師会の構造の中でも一番大枠となる上位組織の日本医師会ではマクロな活動を行っています。

3-1-1.医療政策

国民医療の立場で、医療に係る法案の整備や施策の具体化を行っています。

最近のニュースでは、2020年の東京五輪オリンピック・パラリンピックに向けて、政府へ要望書を提出しています。

1997年に創設されたシンクタンクである「日本医師会総合研究機構」から情報の収集や分析を通して政策を提示しています。

また、実際の政治活動は、「日本医師連盟」が行っています。

3-1-2.倫理問題への対処

性別による産み分けや、末期医療、医師の社会的責任など、技術の進歩した現代では避けて通れない生命倫理の問題が発生してきました。

技術の進歩に伴い、倫理的な規範を作るため、日本医師会が法整備の要求や、コメントを世の中に発信しています。

未来に向けた倫理観を作るため、審査を行い、規範を作っています。

3-1-3.学術活動

医師が常に医療の進歩を吸収できるよう、教育環境の整備を行っています。

関連組織である「日本医学会」は、日本医師会の下に総会やシンポジウムの開催などを行っています。

「日本医学会」は「日本医史学会」や「日本病理学会」など126の分科会を持ち、4年ごとに学会を開催しています。

また、会員に向けて、月刊の『日本医師会雑誌』の発行や、ラジオ・テレビを利用した医学番組で医師個人へのアプローチもしています。

3-1-4.広報活動

会員向けの、機関誌となる「日医ニュース」や「日医FAXニュース」で最新の情報を伝達しています。

内容は、最新の定例記者会見のサマリー、マイナンバーに対する日本医師会の見解など医療技術だけでなく、医師をとりまくさまざまな情報を伝えています。

他にも、食中毒などの発生情報を即時に伝達しており、日々更新される情報を広報しています。

3-1-5.国際協力

日本医師会は世界医師会(World Medical Association:WMA)やアジア大洋州医師会連合(Confederation of Medical Associations in Asia and Oceania:CMAAO)と連携し、各国の医療情報の共有や世界レベルでの医療の向上に向けて努めています。

「ジュネーブ宣言」など各国にまたがる指針となる文書を公開している世界医師会では、2017年10月には第68代世界医師会長に日本医師会会長の就任が予定されています。

3-1-6.公益活動

医師だけでなく、医師会は国民への直接的な公益活動も行っています。
「日本医師会災害医療チーム」では被災地への医薬品の輸送や災害医療を行い、東日本大震災や熊本地震でも、医師が派遣されました。

他にも、
・日本医師会認定健康スポーツ医制度・・・運動を行う人に特化した医療を行う医師の認定
・日本医師会治験促進センター・・・製薬会社が治験を行わない薬物の治験の支援等
・日本医師会生涯教育制度・・・医師の生涯学習を支援
・日本医師会認定産業医制度・・・所定のカリキュラムに基づく産業医の認定
・日本医師会医学図書館・・・全国の大学付属図書館や専門・海外図書館と連携した資料をそろえる
・日本医師会女性医師支援センター・・・子育てからの復帰支援や就業継続など女性医師の支援

と、多くの公益活動を行っています。

3-2.都道府県医師会

日本医師会がマクロな視点の活動を行う一方、都道府県医師会は、より地域に密着した存在となっています。

行政も都道府県で異なっているように、その地域に根ざした都道府県医師会があることで小回りの利く組織となっています。

都道府県医師会では、県単位のシンポジウムや研修会の開催や医事紛争の解決に当たっています。

県によってはその独自の制度を利用することもできます。

例えば、神奈川県医師会に加入すると、神奈川県医療用自動車協会に加入できます。

これは、緊急往診の際に駐車禁止区域でも駐車できる「駐車禁止除外指定車標章」の交付申請をすることができたりと、医療に必要な自動車のサポートをしています。

県によっても異なる医療事情があるため、都道府県医師会では、その地域に必要な部分を的確にサポートしています。

3-3.都市区・大学医師会

890もある都市区・大学医師会(2016年6月時点)は、個々の病院により密着した医師会となっています。

各都市区医師会のホームページでは、その地区の夜間・休日・急病診療の病院を検索可能であることが多いです。

逆に、病院からすれば、都市区医師会に加入することで、患者に紹介してもらう機会が増えるわけです。

大学医師会では、地域との連携はもちろんのこと、研究に力を入れているところも多く、学会費用の助成や研究賞を創設していることが多くなっており、

賞への応募がその大学医師会に加入していることを条件としているところがほとんどです。

なお、都道府県医師会、都市区・大学医師会ともに、治験センターや看護専門学校等の医療関連施設を運営しているところも多くなっています。

各地域によって規模や行政が大きく違うように、都道府県医師会や都市区・大学医師会も地域により利用できる制度や活動内容が異なっています。

このことも、各医師会の活動が複雑で、明確に理解することが難しい要因でもあります。

4.【医師にとっての医師会とは?】

ここまでで、医師会とは、医師が加盟する組織であることがお分かりいただけたと思います。

しかし、医師会は世の中の大きなことに影響を与えていても、一般の方には自分の身近にいる「お医者さん」とはかけ離れた存在に見えがちです。

特に、個人で加入するには決して安くない会費を払うことで、どのようなメリットがあるのかが見えにくくなっています。

大きく分けて、自分でクリニックなどを経営する「開業医」と、病院に勤める「勤務医」の視点から、医師会における関係をご説明します。

4-1.開業医と医師会

開業医にとって医師会に加入することで、病院経営面でも大きなメリットを得ることが可能です。

①仕事がもらえる!

開業医にとって、医師会に加入する一番のメリットは仕事をもらえるということです。

市の予防接種の事業などは医師会に委託されているため、医師会に加盟している医師のいる病院へ仕事を斡旋します。

開業したばかりの開業医にとってはとても大きな収入になります。

また、同じ地域の医師と、医師会を通して懇親会が開催されることも多く、連携した地域医療に向けて心強いネットワークを作ることができます。

医師会から即時に提供される、感染症などの情報も自分で何もかもやらないといけない開業医にとっては大切な情報ネットワークです。

ただし、懇親会開催などからも想像できるように、医師会の事務仕事などが裏では発生しています。

そのような事務仕事を任された場合、地域に根付いているからこそ断りづらく、人間関係や本業とのバランスで頭を悩ます医師も多くいます。

しかし、主に収入面でメリットがとても大きいため、多くの開業医が医師会に加入しています。

②利用できる制度が充実!

自分で経営を行っている開業医の場合は病院勤めで違い、全てを自分で行わなければいけません。
医師会のさまざまな福利厚生を利用することで、個人の病院を経営するにあたって必要なことをそろえることができます。

・開業支援として必要なお金を借りることができる「医療融資」
・事故が起きた際、紛争解決や弁護士のサポート、ひいては金銭面でのサポート(100万円以内は免責)を
してくれる「医賠責」、
・経営者である医師とその家族だけでなく、雇用している看護師の健康保険の医療費も負担してくれる「医師国民保険」

・老後の国民年金に上乗せできる「医師国民年金」

このように、開業医の場合は比較的、医師会加入のメリットが高いと言われています。

4-2.勤務医と医師会

勤務医では勤めている病院による強制で全員加入しているものの若い医者の中には、医師会についてはよく知らない方が存在しています。

勤務医の方が開業医よりも安い金額で医師会に加入することができ、勤めている病院が医師会費を支払っているところも多いため、医師会のメリットを
できる限り得られるよう、日ごろからチェックしておくことをおすすめします。

①病院の外の情報を得られる!

勤務医の場合は、いわゆるサラリーマンの状態なので、自分の勤めている病院によっては自分を成長させる機会が少ないところも多くあります。

その点、医師会を通した講習や、医療にまつわる最新情報を提供してくれるネットワークは病院に関わらず医師会によって直接自分で手に入れることができます。

日本医師会では勤務医委員会を設置しており、勤務医にフォーカスを当てた情報について発信しています。

職場環境の改善をテーマにしたワークショップを各地域で開催しています。

さらに、都市区医師会によっては、地域の会館の図書館サービスの利用や会館の無料利用も可能となっています。

目的意識を持った若い医師ほど、利用できるツールとして医師会への加入は大きなステップアップにつながります。

②医賠責はやはり心強い!

従来では、医療事故へは医師の勤める病院がサポートしてきました。

しかし、全国の病院でも赤字経営が77%を占めると言われており、今までのように必ずしも病院が医師を守れるとは言いがたくなっています。
(2014年 日本病院会と全国公私病院連盟調査)

最近では、患者が病院ではなく、その病院で自分を看てくれた医師個人を訴えるケースが多くなっています。
その場合は、医師個人が紛争解決に向けて被害者との示談交渉などを行わなければなりません。

医師会の医賠責では、医師会が弁護士の手配を代行するため、医師個人が極力ターゲット対象にならないようにしてくれます。

また、紛争の審理機構は医師会の集めた審査会によって判断するため充分な審査が可能となります。

民間の保険会社にも医賠責はありますが、審査は保険会社によって行われます。

他にも、会員の退会や死亡後のサポートなども、民間の保険会社ではオプション契約を結ぶ必要がありますが、医師会の医賠責には基本に含まれています。

医師会の医賠責では、金銭面だけでなく解決に向けた包括的なサポートを期待することができます。

5.【まとめ】

まとめますと、

・医師会は「日本医師会」」、「都道府県医師会」、「都市区・大学医師会の三層構造

・それぞれ役割や活動が違い、マクロな活動から地域医療まで小回りの利く組織となっている

・医師会に加入することで開業医にとっては病院経営面でさまざまな制度が利用可能

・勤務医にとっても個人の成長や危機管理をサポートしてくれる

医師会について、大体のことについてはご理解いただけたと思います。

詳細に自分が受けられる医師会の制度を知りたい医師の方は、今一度会員向けの刊行誌などを参照してみることで、今まで知らなかったメリットを発見できる可能性があります。

一般の方も、住んでいる地区の医師会のホームページから、健康サポートに役立つ情報が得られますので、ぜひ一度チェックしてみることをおすすめします。


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