公的医療施設と民間病院の比較

コロナの感染拡大で公的病院と民間病院では国の要請に対する対応が全く異なるという点が一般的なニュースのレベルでクローズアップされた。
医療資源の観点でいえば、日本の病院数は8000施設あり、日本の千人あたりの病床数は13床である。
この数字は主要7か国の中で最多なのだが、重傷者向けの病床数は3600床のまま一向に増えることはない。
これは国や自治体からの要請で重症者向けベッドを提供しているのは、ほとんどが公的医療施設に限られていることが原因である。

一方、一病床あたりの医師数はアメリカの5分の1ほどしかおらず、フランスやドイツと比較しても3分の1ほどになっている。
それだけ、諸外国にくらべ日本の病床数は破格に多いものの、一人の医師が何倍もの患者を同時に診なければならない繁忙となっている。

こういった状況で、重症者向けのベッドを提供した場合、風評による患者の敬遠、医師や看護師の感染、医師のさらなる繁忙で病院の経営が立ちいかなくなってしまう。
これが民間病院がコロナ患者への病床提供に消極的な原因である。

しかしながら、公的医療機関では話が異なる。
公的医療機関は診療報酬での売り上げではなく、税金をベースにした収入で成り立っているため一般患者が減少しても壊滅的なダメージとはならない。また、患者側も大きな病院に対してはコロナ患者を受け入れることを容認する傾向がある。
また、そもそもが公の機関なので、その指令体系の上層部に国や自治体がいるため、要請には従わざるを得ない体制にある。

実際、欧米諸国と比較すると、日本は民間病院の比率が非常に高く、その独立採算制がゆえに経営にマイナスとなることであれば国の要請に従わない病院が多い状況にある。

では、重傷者向けベッドを提供しないことで民間病院の経営は問題ない状況なのかというとそうではない。
大人数の待合室や対面での診療は感染リスクが高いと、特に高齢者が判断し受診を控えてしまった。日本の医療にとって、高齢者診療はいわばドル箱診療であり、そのボリュームゾーンが来院しなくなってしまったことで、多くの病院は重傷者ベッドを確保しないながらも経営難に陥ってしまっている。

こういった病院をいま買いあさっているのが中国の富裕層だ。

日経平均株価の動きを見るとリーマンショック以来、日本の株価は持ち直し、ついにバブル崩壊前の株価にまで持ち直したことで、一見経済が成長しているようにみえるが実際はそうではない。
見るべきところは物価の上昇率だ。
日本はバブル崩壊以来、価格破壊という言葉が飛び出すほど、より商品を多く売るために低価格戦略を突き進んでしまった。
当時、強烈な円高だったこともあるのだが、このころの日本の物価はNYより高い状態だった。それが今では、NYの半分の物価でしかない。
このことで中国からの日本買いが始まり、コロナで経営体力を奪われた多くの民間病院が中国の富裕層に買われているのが現在である。

日本の医師や看護師の高い稼働率は海外と比較すると非常に安い人件費で済むこととなり、加えて物価が安いとなれば、投資対効果は非常に大きい。さらに日本は後進国や共産主義国家と違って政情も安定しているのだから、安心して投資ができる。

つまり、民間病院ではこの先、「経営者はだれなのか?」「病院が売却される危機は無いのか?」という点に注意しなければならないということだ。看板だけはどこでもある日本の病院だが実態は中国人が経営していることがあるためである。

こういった中国富裕層による日本の病院買いはまだ表立っての報道にはなっていないが、東京の高級マンションを中国の富裕層が買いあさっているのと同じことである。

20年ほど前、米国のファンド企業が日本での病院経営の乗り出したことが話題になったが、このとき、アメリカでは医師と経営者が分離されているものの、日本では医師免許を持たないと病院経営ができないという規制に阻まれ、実現には至らなかった。このアメリカが超えられなかった規制の壁を中国人はいとも簡単に突き破ってしまったのである。この点は、アメリカと中国を比較したときに契約を重視するか、強引に手に入れてしまうかの国民性の違いが表れている点だ。おそらく同じ手法を用いて、今後はアメリカをはじめとした海外の投資家も日本の病院経営に乗り出してくることだろう。
もちろん、こういった外国人による病院の買収は公的医療機関では発生しない。

日本人と異なり、海外の投資家は、投資目的、つまりリターンが目的であるため、買い取った病院で資源の集中を利益の最大化を進めることになる。採算性の低い診療科は無くされてしまうであろうし、より効率的な経営を行うために、患者へのサービス面はどんどん削られてしまう。もちろん、医師や看護師の労働環境についてもさらなる繁忙を強いられることになるだろう。

転職先で、公的医療機関と民間病院を比較する際は、これまで存在しなかった経営者と外国人投資家への譲渡リスクを頭に入れておくべきだろう。


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