じつは狙い目!脳神経外科の転職動向とこれからの働き方

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「脳疾患を扱う外科」という字面から、生死を分ける手術のイメージが強い脳神経外科。ですが実際のところ、治療範囲は非常に広く、多方面に渡って活躍できる診療科目です。脳神経外科をめぐる「需要」と「供給」のアンバランスさ、今後転職に向けてチェックしておきたいポイントなどについてまとめました。

脳神経外科の置かれる現状

脳神経外科では、脳神経系の疾患に対して治療を行います。

脳の疾患では麻痺や言語障害といった後遺症が残りやすいため、手術を中心とした治療だけでなく、手術後の診察・リハビリにも対応。症状を治すだけでなく、生活の質の向上を強く意識した対応が求められます。

また脳血管障害への対応は一分一秒を争う場面も少なくないため、非常に責任の重いポジションです。その分「やりがいがある」、「目に見えて患者が回復する」ことをプラスととらえることのできる医者に向いています。

2004年度から必修化された臨床研修制度によって、若い医者の外科離れが進んでいると問題視されています。さらに2010年度には外科研修が必修から外れたことにより、その動きはますます加速。外科や産婦人科は訴訟リスクも高いことから、脳神経外科には人が集まりにくい傾向が見られます。

厚生労働省が平成22年に実施した「必要医師数実態調査」によると、脳神経外科の現員医師数は5,754人、それに対して必要医師数は999人となっています。つまり臨床現場で求められる医者がおよそ1,000人足りていないという状況。これは12ある外科科目の中で、整形外科、(一般)外科に次いで3番目の数値です。

脳神経外科の求人傾向、ニーズ

求人傾向

上で述べた通り、脳神経外科では若い医者が集まりにくい状況にあります。しかしその一報で、高齢化の影響などを受けて、脳疾患のプロフェッショナルへのニーズはどんどん高まっています。

求人内容は大きく分けて二つ。

・外科的手術を中心とする、急性期病院での勤務
・手術後のリハビリ、診察を中心とするリハビリテーション病院や脳ドッグでの勤務

いずれも求人数は増加傾向にあり、転職希望者にとっては売り手市場であると言えます。

特に医者不足が叫ばれる地方の病院においては、年収額のアップや残業・オンコール勤務への配慮など、待遇面で有利に交渉することも可能でしょう。

どのような人材が求められるのか

面接時には、専門領域と手術実績や血管内治療の症例数などを聞かれることがあります。急性期の総合病院や専門病院では特にその傾向が強いので、スムーズに答えられるように準備しておきましょう。

とは言え脳神経外科は人手不足のため、専門スキルを身につけたいという医者、後期研修医の求人募集も少なくありません。

脳神経外科では他科の医者や放射線技師などとの連携も不可欠ですので、そういった中で円滑にコミュニケーションをはかり、協力関係を築いていける人物かどうかも重視されます。

脳神経外科の年収事情

ではここで、医療に特化した転職サイト「リクルートドクターズキャリア」のデータを参考にしながら、脳神経外科の年収についてチェックしてみましょう。

脳神経外科の年収額は平均的?

リクルートドクターズキャリアでは、脳神経外科の求人年収の3割強が「1,400万円以上」となっており、他科目と比べるとやや高い水準にあるようです。

一方で「1,800万円以上」の割合は全体のわずか3%ほど。脳神経外科の年収は「医者全体の平均よりは若干高いものの、ものすごく高給だとは言えない」ということになりますね。

もちろん中には「2,000万円以上」という求人もありますが、これはよほどの激務が予想されます。応募の際には慎重に検討すべきでしょう。

地域ごとに見ていくと「1,400万円以上」の求人を出している割合がもっとも高いのは甲信越・北陸地方で、40.0%。次が東海地方で39.9%でした。次いで関東、中国・四国、九州・沖縄、関西、北海道・東北と続きます。「1,800万円以上」の求人がもっとも多いのは関東地方でした。

実際の求人票をチェックしてみると……

実際に、リクルートドクターズキャリアに寄せられた脳神経外科の求人票をチェックしてみました。

全国における脳神経外科の求人数は456件で、一般外科の389件を上回っています。求人数の多さがこれで裏付けられたわけですが、ここで他科との大きな違いが一つ。それは、提示される年収額の幅が大きいということです。

脳神経外科の募集案件で提示されている給与を見ていくと「900万円~ 」、「800万円~1,800万円 」、「850万円~2,500万円 」といったものが少なくありません。下限が1,000万円を割っていることも驚きですが、下限と上限との差が倍以上開いている求人票というのはあまり見かけません。

医者の年収が経験やスキルによって変動するのは致し方ないことです。が、脳神経外科ではとりわけその傾向が強く見られる、非常にシビアな分野だということでしょう。

医者としての「これから」。多様な働き方が可能

スキルアップをめざして働く

若い医者の場合、外科離れの影響もあって同年代で脳神経外科に進む医者は多くありません。ですので、他科と比べると若手がスキルを磨きやすい環境が整っていると言えるでしょう。

たくさんの症例を積める環境の整った医療施設を見つけられれば、クリッピング術、コイル塞栓術、ステント留置術といった専門スキルを身につけることも可能です。

また専門医の取得をめざす場合は、これまでの取得状況や指導体制なども事前に調べておきましょう。常勤医が多くて一人あたりの症例数が少なかったり、指導体制が整っていなかったりといったケースも考えられます。転職後に「こんなはずでは……」と後悔することのないように。

ワーク・ライフ・バランスを重視して働く

脳神経外科は総合病院以外にもさまざまな医療施設からのニーズがあり、プライベートを重視した働き方も可能。非常勤での募集も多めなので、育児や介護と両立させながら働きたい女性の医者にもおすすめです。

脳神経外科の特性上、専門の当直やオンコール体制が敷かれていることがほとんどです。また難度が高く長時間に渡る手術も多いため、残業時間も長くなりがち。このあたりを免除または配慮してもらえるかどうかが、転職先を見極めるうえで大切になってきます。

リハビリ、在宅医療の分野で働く
脳神経外科医が活躍するのは、手術のときだけではありません。脳疾患は手術後にも後遺症が残るケースが多いことから、長期間に渡ったケアが欠かせない分野なのです。

リハビリテーション病院への転職を検討する場合、チェックしたいのはPT(理学療法)・OT(作業療法)の人数、連携体制やリハビリテーション認定医・専門医の取得が可能かどうか、などです。

またリハビリスタッフへの教育が必要になる場合もあるため、医者自身の指導力やマネジメント力も求められます。

在宅医療分野に力を入れている病院も少なくありません。たとえば東京都にある林脳神経外科メディカルクリニック(所在地:東京都杉並区 阿佐谷南1丁目9−2 電話:03-5305-8831 院長:林靖人)では在宅訪問診療部を設置し、医者が定期的に患者の自宅を訪問します。

高齢化が進む現代において、在宅医療の重要性はますます見直されてきており、同クリニックでは500人以上の患者が利用しています(2017年6月現在)。

この場合は専門領域だけでなく、内科的なプライマリケアを求められるようになりますが、救急対応がなく、ゆとりを持った診療ができるというメリットがあります。

おわりに

外科離れの影響で、成り手が減っていると言われる脳神経外科医。高齢化の影響、クオリティ・オブ・ライフの観点からも、今後ますます必要とされる分野であることは間違いありません。

転職動向としては、完全に「需要」に「供給」が追いついていない売り手市場。武器となるスキルや経験さえあれば、今よりもさらに高待遇で転職することも夢ではありません。

また若手の医者にとっても、同年代のライバルが少ないという状況はチャンス。医者としてステップアップできる環境が整っていますよ。

働き方も多様で、緊迫する現場第一線での手術から、リハビリ施設や在宅でゆったりと診療を行うこともできます。これからの働き方を考える医者にとって、脳神経外科は「狙い目」の分野だと言えるでしょう。

<参考>日本医師会
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