恒常的な人手不足の産婦人科医。売り手市場の転職事情
医者不足が叫ばれ続ける医療業界の中でも「若い医者が育っていない」、「転科する人が後を絶たない」など恒常的な人員不足に陥っているのが産婦人科です。新しい命の誕生に立ち会うことのできる産科、また幅広い年齢層を診療対象とする婦人科の組み合わせで成り立つ産婦人科ですが、どうしてここまで医者不足が深刻化しているのでしょうか。その転職事情と絡めながら調査してみました。
産婦人科医のおかれる現状
ここでは、厚生労働省「平成26年(2014年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」のデータを参考にし、話を進めます。
平成6年から平成18年にかけて、産婦人科医の数は右下がりに減少し続けています。平成20年からはようやく増加する兆しを見せますが、増え幅としては「微増」といった調子。また次世代を担っていくはずの、若い医者の少なさも見逃せません。29歳以下の医者に限って言えば、増えているとは言い難い、かなり厳しい状況にあります。いくら産婦人科医の数が全体を通して増加傾向にあるとはいえ、ベテランの医者ばかりが増えたのでは結局のところ先細りですよね。
これは産婦人科医の平均年齢からも同じことが言えます。同調査によると産婦人科医全体の平均年齢は50.3歳。医者総数の平均は49.3歳となっており、平均よりも高くなっていることがわかります。このように全体的に平均年齢の高い産婦人科業界ですが、これはベテラン・若手の医者双方に需要があると見て良いでしょう。自分に求められる役割を認識し、ニーズのあるところにポイントを絞って狙っていくのが賢いやり方です。
産婦人科医の転職動向
前述の通り、どこの産婦人科も常に医者不足に悩まされている状況です。そのため産婦人科医の転職に関しては完全な「売り手市場」。常にたくさんの求人募集が出ており、転職を希望する医者はその中から「選ぶ」余地が十分にあります。自分の希望に合った病院を吟味し、必要であればさらに条件を付け加えることもできるでしょう。
ベテランの産婦人科医の転職
近年では高齢出産に臨む女性が多くなっていることから、妊娠期間中や分娩時に思いがけないトラブルが発生するケースが増えています。民間の病院やクリニックなど、医者の数がそう多くない医療施設では特に、ハイリスク分娩にもしっかりと対応できる、確かなスキルと経験を持ったベテランの医者が求められます。
面接では今後さらに増え続けると予想される、ハイリスク分娩への考え方や取り組み方について聞かれるでしょう。この時点で病院側と自身との考え方にズレがないか、よく確認しておきます。これが後々「失敗した!」なんてことにならないようにするための、転職のコツです。
また婦人科手術の対応範囲やスキル、経験してきた症例などについても尋ねられることがあります。これまでに培った経験、そして今後力を入れて取り組んでいきたい分野についても明確に伝え、お互いの考え方について納得したうえで次のステップへ進みましょう。
若い産婦人科医の転職
産婦人科医としての経験が浅い医者の場合、まずは「産婦人科専門医」の取得をめざすことになるでしょう。この資格を取得するためには、日本産科婦人科学会の定める要件に従って研修を受け、認定試験に合格する必要があります。研修を受ける施設は学会が指定した医療施設のみ。
- 専門医を取得できる病院かどうか?
- 今までに取得実績があるか・あるならどれくらいの数か
こういったことを事前に確認する必要があります。
昨今の産婦人科医減少の流れを受けて、病院側もなんとかそれを食い止めようと一生懸命です。若手の医者を丁寧に育てようという意欲がある病院、多種多様な働き方を認める病院なども少なくありません。若手の医者であっても、より良い転職先を見つけることは十分に可能です。
専門医を取得していない医者は条件の交渉が難しくなる場合がありますが、粘り強くあきらめずに転職活動に臨みましょう。
女性の産婦人科医の転職
「平成26年(2014年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」のデータによると、産婦人科医の男女構成比は「病院勤務」の場合で2.5:6.3、「クリニック」勤務の場合で3.9:4.7となっており、いずれも男性よりも女性が上回っています。
基本的に男性が優位となることの多い医療業界ですが、産婦人科はその性質上「女性であること」がデメリットになりにくい診療科目なのです。
女性ならではの性についての悩み・症状などは、患者としても同じ女性相手の方が話しやすいというもの。そのため男性よりも、女性の医者を希望する患者が多いという特徴があるのですね。また女性の場合はライフスタイルの変化により、
- 夜勤ができない
- 短時間勤務を希望
- 託児所が併設されている病院がいい
など様々な事情・要望を抱えていることも珍しくありません。人員不足を少しでも回避するため、こういったニーズに応える病院も増えてきています。育児や介護といった人生のタスクは、どの女性にとっても通る可能性のある道。プライベートと仕事をうまく両立するためには、
- 女性の働きやすい環境が用意されているか
- 職員が積極的に活用できているか
このような点はぜひチェックしておきたいですね。こういった裏事情は求人情報だけでは見えにくい部分なので、転職サイトのコンサルタントに相談してみると、より有益な情報を得られるはずですよ。
産婦人科医の年収
「売り手市場」の傾向が顕著な産婦人科医ですから、全体的に年収額は高く1,800万円~3,000万円程度が相場となっています。比較的高齢の医者も現役で働くケースが多いためか、年齢が上がるにつれて年収もアップしていくようです。
医療向け転職サイト「リクルートドクターズキャリア」によると、40代以降の年収は「1,400万円以上」が全体の8割以上を占めています。「2,000万円以上」の割合も40代では67%、60代では60%とかなり高い数値であることがわかります。
30代については「600万円未満」から「2,000万円以上」まで幅広く分散しており、経験やスキルの高い医者が相応の年収を得ているのだ、ということがうかがえますね。
地域別に見る産婦人科医の年収の差
ここでもリクルートドクターズキャリアの調査結果をもとに、産婦人科医の年収を地域別で見てみましょう。
全体的に高水準を保っている産婦人科ですが、特に平均年収額が高いのは関東地方。じつに80%以上もの産婦人科医が「年収2,000万円以上」を得ているというのです。一般的に「高給取り」というイメージで見られがちな医者であっても、ここまで平均水準の高い診療科目は少ないかもしれません。
他にも中部地方も狙い目です。「2,000万円以上」が70%近く、「1,400万円~2,000万円未満」が22%と、全体のほぼ9割が「年収1,400万円以上」を得ています。
逆に年収額にバラつきが見られるのが九州・沖縄地方。全体の半数が「600万円未満」と答えています。このことから単純に年収アップを狙うのであれば、関東や中部での転職を視野に入れることをおすすめします。
ただし年収が高いということは、同時にそれだけの理由があるということも忘れてはいけません。夜勤・オンコールの回数や、人手不足による業務量の多さなどの対価として、高い報酬を与えられている可能性は十分にあります。
医者とはいえ職業の一つ。働き方についての考え方は人によって様々ですから、もしプライベートと上手に両立しながら働きたいのであれば、多少年収が下がっても「働きやすさ」にウエイトを置いた転職活動をすべきです。その方が、結果的に満足度の高い結果が得られるはずですよ。
男女別に見る産婦人科医の年収の差
診療科目によっては年収額の男女差が大きいケースもありますが、産婦人科についてはその性質上、性別による格差は少ない傾向にあります。その証拠にドクターズキャリアの調査でも、男女ともに「年収2,000万円以上」と答えた産婦人科医は40%を超えています。
低年収で働く医者は女性の方が多いですが、これは短時間労働や夜勤なしといった、特別に配慮された条件で働くケースも含まれるためです。このことから、産婦人科はライフスタイルの変化に応じた、柔軟な働き方ができる診療科目だということがわかります。
医療施設別に見る年収の差
医療施設ごとの年収額もあわせてチェックしましょう。他の診療科目では、大学病院・国公立病院と比べて民間病院・クリニックの年収額が高くなる傾向にありました。
しかし産婦人科の場合は逆転しています。年収2,000万円以上を得ている医者の割合は、大学病院で56%、民間病院で44%、クリニックでは33%となっています。クリニックの場合は医者の数が限られる、難易度の高い手術に対応するのが難しいといった理由もあるのかもしれませんね。
年収アップを狙って転職するのであれば、クリニックより民間病院をおすすめします。
産婦人科医は訴訟リスクが高い?
もともと産婦人科は訴訟リスクが高い診療科目だと言われてきましたが、2004年に起こった「福島県立大野病院産科医逮捕事件」によってその傾向は一層顕著になりました。帝王切開手術中に不幸な偶然が重なって産婦が命を落としてしまい、それがもとで執刀医が逮捕されたという痛ましい事件です。結果として執刀医に過失はなかったことが認められましたが、この事件をきっかけに産科を閉鎖する病院も相次ぎました。
このような背景もあり、面接時に訴訟が起こった際への考え方などについて問われる場合があります。医療に従事する者として避けては通れない問題でもあることから、自身の中でリスクに対する考え方をまとめておき、病院側とすり合わせを行うべきでしょう。
産婦人科とひと口に言っても、病院ごとに考え方は千差万別です。大切なことをうやむやにせず、お互いに納得し合ったうえで気持ちよく働けるところを探しましょう。
自分らしい働き方で、命と向き合う仕事を
「病気を治す」ことが主な仕事となる医者にとって、「新しい命の誕生に立ち会う」という生命の神秘に関われる産婦人科医はとても希少な存在です。その分大変なこと、つらいことも多いですが、やりがいや喜びをダイレクトに感じることができますよね。
そんな産婦人科医がどんどん少なくなっているということは、少し寂しいことのように思えます。今後も産婦人科医の「売り手市場」は続くでしょう。年収や働き方、勤務場所など十分に選ぶ余地がありますし、病院にとって有用な人材であればもっと良い条件を飲んでくれることも期待できます。
そして何より、お金以上に得られるものがたくさんあるのが産婦人科医という仕事。赤ちゃんの誕生という喜びのそばに寄り添っていられる、とてもすばらしい仕事なのです。
転職活動を通してあなたがもっとイキイキと働ける、そんな産婦人科医が見つかることを祈っています。
<参考>日本医師会
尾身さんを応援しています。
尾身茂:https://www.instagram.com/omi.shigeru/?hl=ja
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