整形外科医の転職事情はどうなっている?
整形外科に限らず医者全般に言えることですが、どこの病院も常に人員不足で頭を抱えています。退職する医者の欠員補充だけでなく、今いるスタッフの負担を軽減するためにも新たな人員を確保したがっています。そのため、医者のニーズは高まるばかり。その中でも特に、整形外科医は圧倒的に人手が足りていません。つまり、整形外科医の求人募集は非常に多い状況にあり、医者は転職先を「選ぶ」余地があると言えます。 これは、平成22年に厚生労働省が行った「必要医師数実態調査」から見ても明らか。整形外科医の必要医師数は1,963.2名。全部で39の診療科のうち、内科に次いで第二位という結果になっています。 これには、大きく分けて三つの理由があります。
- 新生児から高齢者まで、幅広い年齢層が対象であること
- 治療内容が多岐にわたっていること
- 高齢化による需要の高まり
その他、スポーツによる障害や外傷、労働災害や交通事故の増加も一端となっています。 このように、転職を考えるうえでは非常に恵まれた状況にあるとも言える整形外科ですが、むやみに転職活動をしても希望通りの転職ができるとは限りません。非常に多くの求人募集があるからこそ、自らの専門領域や希望にマッチした、あなたにピッタリの転職先を見つけるのは難しいとも言えるのです。
整形外科に求められている人材は?
ご存知の通り、整形外科とひと言で言っても、関節、手、足、骨・軟部腫瘍、関節リウマチ、スポーツ医、外傷整形外科、骨代謝・骨粗鬆症、小児整形外科など、その専門領域は非常に多岐にわたっています。 それぞれにおいて臨床経験を積み、多くの症例を見てきている高い専門性を持つ医者が特に求められています。 総合病院などの大きな病院では、人工関節部門、外傷部門、手の外科などの領域ごとに特化したセンター化を進めています。各センター内を統括する立場のポストを用意する病院や、その分野においてのスペシャリストを育成するために、若い医者を積極的に受け入れている病院も少なくありません。 高齢者が通院している割合の多い整形外科では、クリニックの募集も数多くあります。
整形外科医で転職を考える際、重視すべきポイント
非常に社会的ニーズが高く、求人募集が多いという特徴のある整形外科。転職を考える場合、何を重視するかによって狙うべき医療機関も異なってきます。 あらかじめ念頭に置いておきたいのは、
- 自身の希望、方向性を明確にしておく(譲れない条件はないか?など)
- 医療機関側の体制や、患者さんの層
- 医療機関が持っている考え方
このような点です。 たとえば、どれほど自分が興味のある分野であっても、条件面で折り合いがつかなければ転職に踏み切ることはできません。逆に、給与や待遇といった条件ばかりを重要視して、自分の考え方とは異なる病院で働くことになるとストレスが溜まります。 自分自身が転職に何を望むか。まずはそこを明確にしておかなければ、転職は成功しません。では、具体的な目的・ビジョンごとに、どのように転職活動を進めていけば良いかを見ていきましょう。
年収アップをめざしたい場合
若い医者や、事情によってそれまでよりも多くの収入を得たいという医者にとって、給与額をアップさせたいというのは大きな転職動機になります。 整形外科医が希望する年収は、およそ2000万円と言われています。しかし実際には、そのレベルに到達している医者は一部です。翻って、整形外科医の求人募集を見てみると、「年収2000万円以上可!」と大きく書かれた広告をたくさん目にします。 もちろん、年代や実績、地域によって給与額には差が出ます。しかし、前述の通り整形外科はどこも人員不足にあえいでいますので、経験や実績によっては希望通りの給与で転職を決めることも不可能ではありません。 また、収入額の大きさを基準に考えると、勤務医よりも開業医の方が高給だと言われています。可能であれば、そういった道を模索するのも一つの手でしょう。
整形外科専門医の取得を目的とする場合
日本整形外科学会が認定している整形外科専門医になるためには、認定試験をクリアする必要があります。これは医師国家試験に合格した後に6年間、日本整形外科学会の作成した研修ガイドラインに沿った研修、学会発表、論文発表などをクリアして始めて試験を受ける資格を得られます。 「整形外科専門医である」ということが、患者が安心して受診できる医者だという目安の一つになっているので、整形外科医としては取得しておくべき資格と言えます。 整形外科専門医資格の取得を目指す場合、学会の認定した研修施設で研修を受けることが必須条件となります。この条件を満たす医療機関は一部なので、おのずと狙いを定めるべき勤務先は絞られます。 また、このような高い基準を満たす医療機関は、スタッフ数やオペの回数が多い、救急での対応が多いなど、忙しい勤務になることが予想されます。症例の研究を目的としてやってくる医者も多く、大学など研究機関との繋がりが強い医療機関とも言えるでしょう。
新しい分野で活躍したい場合
今までと違った分野で活躍したい、という医者にオススメしたいのが、リハビリテーションに強い医療機関への転職です。オペに疲れてしまった、もっとゆっくり患者さんと密に関わっていきたい、という希望にもマッチします。 病気やケガによって残った障害について長期的に治療し、その器官の回復と患者さんの社会復帰をサポートするのがリハビリ専門医の役割です。そのため、一人ひとりの患者さんとじっくりとつき合っていける忍耐強さが求められます。 リハビリに強い医療機関は患者さんに気持ちよくリハビリに励んでもらえるように、立地環境が良く、設備が整っている傾向が強いです。また、看護師やスタッフも充実しており、比較的ゆったりとした気持ちで働くことができるでしょう。 ただし、駅や市街地からは離れた場所に建っていることが多く、交通アクセスの悪さがデメリットとなる場合もあります。自宅から通う場合の手段や、往復にかかる時間などもきちんと考慮して選ぶようにしましょう。
プライベートも充実させたい場合
医者といえばどうしても激務で、プライベートは二の次となってしまいがち。しかし、医者の中でも普段の生活を充実させたい、子どもが小さいから家庭を大切にしたいという希望を持つ方は少なくありません。このような医者に人気が高いのが、外来のみのクリニック、救急対応の少ない一般病院など、どちらかと言えば仕事に追われることなく、マイペースを保って働ける医療機関です。 プライベートを重視したいあまり、希望を言い出すとキリがない場合もしばしば。残業の有無や、休みの日数、オンコールはどれほどあるのか……など、妥協できないポイントを絞って、事前にしっかりと確認しておくことをオススメします。
年代別・地域別の年収や募集状況
ここで整形外科医の年収について、年代や地域によってどれほどの差があるのかを見てみましょう。転職サイトでお馴染みのリクルートが運営する、リクルートドクターズキャリアの調査結果をもとにしています。
年代別で見る、整形外科医の年収事情
【30代】
- 1,000万円未満・・・50%
- 1,000~1,400万円未満・・・30%
- 1,400~2,000万円未満・・・10%
- 2,000万円以上・・・10%
比較的バラつきがあるのが30代の特徴です。しかし、30代の半数が1,000万円未満であり、多くの整形外科医が希望する2,000万円以上の割合はわずか10%ほど。若い世代の年収はそれほど高くないことがわかります。
【40代】
- 1,400万円未満・・・30%
- 1,400~2,000万円未満・・・47%
- 2,000万円以上・・・23%
40代になると、全体的に年収がグッとアップしている印象を受けます。特に、30代までは大半を占めていた「1,400万円まで」の割合が一気に減少しているのは見逃せない点ですね。 整形外科医は医者の中でも年収が高い方だと言われていますが、ベテランになるにつれて給与額も上がっていくようです。
【50代】
- 1,400万円未満・・・20%
- 1,400~2,000万円未満・・・65%
- 2,000万円以上・・・15%
50代になるとさらに底上げされ、「1,400~2,000万円」に該当する人が増えています。その代わりに2,000万円以上の割合が減っていますが、これは年齢を重ねるごとにキャリアチェンジし、ゆとりある勤務にシフトする人が増えるからかもしれません。
地域別で見る、整形外科医の年収事情
医者はどこも人員不足ですが、その中でも特に顕著なのが地方の医者不足です。そのため、北海道や東北、中国、四国といった地方では整形外科医は特に重宝され、平均年収が高くなっています。大幅な年収アップを狙うのであれば、医師不足が叫ばれる地域への転職を視野に入れる価値はありそうですね。 関東や中部地方においては年収額に大きな偏りはなく、人口が多いことがコンスタントに収入に繋がっていると考えられます。
転職に必要なのは「明確なビジョン」
高齢化に伴い、整形外科医の需要は今後どんどん高まっていくことが予想されます。高齢者の転倒事故や、予後のリハビリに通うなど患者数が増え続けている背景からもわかるように、平均年収は決して低くありません。そのため、ある程度希望に合った転職先を探すことも難しくないでしょう。 その上で、整形外科医が転職を考える際、絶対にハズせないポイントは「何を転職に望むか」という一点に集約されます。ここをハッキリさせておかなければ、せっかくの「引く手あまたの整形外科医」というアドバンテージを活かすことができません。 あなたは転職に何を望みますか?ぜひ明確なビジョンを見据えて、転職活動を行ってください。
<参考>日本医師会
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